のたお印の短編集
まさか刃で氷塊を砕くとは。

無名の瞳が僅かに見開かれる。

その間隙を狙って距離を詰めようとした猛流は。

「ぬぐっ…!」

心臓を鷲掴みにされるような胸の痛みに膝をつく。

二度、三度と喀血。

ビチャリとアスファルトに赤黒い血が吐き出される。

「永久子…貴様…」

思わず口走る。

内から、外から。

猛流は二体の『黒の者』を相手取る事を強いられていた。

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