のたお印の短編集
そんな中で雪村 亮二だけが傭兵部隊の目に留まらずに生き残れたのは、偶然でしかなかった。

彼が母と共に暮らす家は、村の中心部から離れた場所だった。

日当たりもよくなく、昼尚薄暗いような環境の悪い場所。

その環境の悪さが、病弱で床に臥せてばかりの母と、亮二を生き残らせた。

…朝が来る頃、村は焼き討ちに遭って無惨な姿と化していた。

天に手を伸ばし、助けを求めるようにして黒焦げになった累々たる屍の群れ。

亮二は絶対に忘れない。

血涙を流し、復讐を誓った。

あの傭兵ども、一人残らず殺してやる。

必ず全員殺してやる。

絶対に。

絶対に。

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