のたお印の短編集
10年後。

ある雨の夜。

「たた、助けてくれよっ…!」

マイケル・レムナントは尻餅をつき、両手を振りながら無様に命乞いする。

水溜まりに尻をついたせいで、濡れて気持ち悪い。

まるで失禁でもしてしまったようだろう。

否。

彼は本当に失禁してしまっていた。

目の前に立つ若い男の『端正な顔立ち』に。

優男だった。

女ならば誰もが目を奪われるほどの美形。

舞台俳優でも、モデルでも務まりそうなほどの男だった。

その端正な顔を寸分も歪ませる事なく。

男はレムナントの部下を殺していた。

既に7人も。

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