のたお印の短編集
「な、何の事だ…?」

レムナントは言う。

惚けている訳でも、知らないふりをしている訳でもなく。

本気で覚えていないという表情で。

「た、確かに俺はデルタに所属していた…だけどそんな村なんて知らない。人違いじゃねぇのかっ?」

「……」

冷徹な眼差しで、男…雪村 亮二はレムナントを見る。

つまり、そういう事だ。

亮二の村と同じように、数多くの集落を滅ぼしてきたのか。

それともレムナントの印象に残るほどの事ではなかったのか。

どちらにせよ、この男にとって亮二の村を滅ぼしたという事は、『その程度の事』でしかなかったのだ。

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