のたお印の短編集
Transformation-変貌-
夜の闇の中、男はひたすらに走る。
息が上がっていた。
汗が止まらなかった。
無理もない。
もう数十キロは走り続けているだろう。
行けども行けども険しい山中。
足元は切り立った崖だ。
踏み外さずにいられるだけでも僥倖だった。
月すら出ていない真夜中。
こんな山奥を、まるで昼間のように走り続けている。
彼には『見えていた』。
明かり一つない闇の中でも、地面に這う木々の根も、葉の一枚一枚さえも。
鮮明に見えていた。
息が上がっていた。
汗が止まらなかった。
無理もない。
もう数十キロは走り続けているだろう。
行けども行けども険しい山中。
足元は切り立った崖だ。
踏み外さずにいられるだけでも僥倖だった。
月すら出ていない真夜中。
こんな山奥を、まるで昼間のように走り続けている。
彼には『見えていた』。
明かり一つない闇の中でも、地面に這う木々の根も、葉の一枚一枚さえも。
鮮明に見えていた。