のたお印の短編集
喉を潤すどころではない。

すぐに踵を返して走り始める男。

冗談じゃない。

あんな化け物に捕まるなんて御免だ。

捕まったら最後、何をされるか分かったもんじゃない。

ひた走る男。

そんな彼に付かず離れずで。

「!!」

樹上、枝から枝へ。

二つの影が追いかけて来るのが分かった。

姿形こそ先程の5号と同じ。

しかし片方は新緑色、もう片方は斑色。

その影は男よりも素早く先回りして、樹上から飛び降り立ち塞がる。

「何処まで逃げるんだい?」

また二体の異形が、男の行く手を塞いだ。

3号と6号。

3号は基本的な身体能力を極限まで増強した個体、6号はこの山中のような不整地での戦闘を目的とした個体だった。

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