のたお印の短編集
なのに。

「な…に…!」

落下速度も加えず、その場に立ったままで。

しかも一発の蹴りで。

10号は二人の飛び蹴りを受け止め、逆にその衝撃で破壊した。

蹴り足から伝わった破壊の威力が、3号と8号の改造されたボディを粉砕する。

飛び散る体液と強化骨格の破片が、周囲に散らばる中。

「……」

10号は感情を感じさせない複眼で、己の両手を見つめる。

「…本当に俺は…人間ではなくなってしまったんだな…」

無感情、無感動の異形の顔。

涙すら流れないその瞳。

しかしその横顔からは、確かに慟哭が見て取れた。

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