のたお印の短編集
咄嗟に振り向いた。

「…可愛い顔して、えげつないもの持ってんだな…」

少女の背後、彼女より頭一つ背の高い青年が言う。

黒髪、中肉中背、瞳は普段長い前髪で隠れている。

が、時折その前髪から覗く瞳は、凡庸とした外見からは想像もできないほどに鋭いものだった。

「…アンタ誰」

愛らしい表情に似つかわしくない言葉遣い。

少女はククリナイフを肩に担ぎ、ワンピースのスカートが捲れるのも気にせず蟹股でその場にしゃがみ込んだ。

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