のたお印の短編集
俊平が見ている前で、ゆっくり、ゆっくりと。

冴子は膝を付き、手を付き、廊下に四つん這いになる。

「っっっっ…」

恥ずかしかった。

背後から見られれば、何もかもが丸見えだろう。

自分でさえ見る事のない箇所が、まだ知り合ったばかりの俊平の眼前に全て曝されている。

本当に犬みたいだ。

自分が犬ならば、こんな恥辱など感じなかっただろうに。

理性のある人間だから、全校生徒の代表たる生徒会長だからこそ。

冴子は気がおかしくなりそうなほどの屈辱を噛み締める。

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