うさぎとねこ
合唱祭当日。

舞はいつも通りうさぎを抱え、割り振れられた席に座っていた。

俺の席は遠かったから出番があるまで話すことはないと思う。

自分の席に座ると隣に座っていた涼太が話しかけてきた。

「紅葉〜。ありがとな、須藤を説得してくれて」

と言って爽やかな微笑みを見せた。

「別にいいよ。じゃ、なんかおごって」

と笑いながら言うと涼太は鞄を漁り、チケットを二枚くれた。

「駅前にチョコレートの店があるだろ?

親があそこの常連でさ。割引券もらったんだ。

お礼にこれやるよ」

と言われたのでチケットを見てみると確かにチョコレート屋のマークが入っていた。

「おー、さんきゅ。でも、なんで二枚?」

俺が聞くと涼太は何かを企んだ微笑みで

「須藤と行ってこいよ。

甘いものが嫌いでも、あそこならビターも多めに置いてあるからよ」

と言った。涼太の言葉に動揺して

「なっ…なんで舞とそんな…デートみたいなこと…!」

と心情を口走ってしまった。

その反応を見て涼太はニヤニヤと笑い

「頑張るんだよ?応援してるからさぁ〜」

と俺の肩に手を置き楽しそうに笑った。

…どうやって誘えって言うんだよ……。
< 17 / 19 >

この作品をシェア

pagetop