フルムーン~月夜の旋律~
「あのバカっ!」
安曇の怒りのような声が聞こえた。
それでも私はお構い無し。
炎華を構え、目を閉じて意識を集中させる。
〈ターゲット確認。捕獲にかかります。〉
聞こえた……。
前の方からだ。
__ざっ
上から何か降ってきた。
いや、襲い掛かって来た。のが正しい。
__闇夜だ。
黒いマントで全身を覆い、仮面を被っている。
刀の鞘を抜き払って、襲い掛かって来た闇夜を斬りつける。
「ちっ。」
あと数ミリのところでかわされた。
ヤツは、空中で一回転して私の後ろにまわる。
も~。
おとなしく斬られなさいよ!
斬りかかった状態のまま、後ろに振り返ってヤツを斬った。
今度は逃(ノガ)さなかった。
斬りつけられたヤツはの傷口から炎があがる。
それを見て、私は唱えた。
「義の炎、悪しき輩を紅蓮の炎で焼き払え。」
__ブァっ
ヤツは呪文の通り、紅蓮の炎に包まれ一瞬で消えた。
……消滅だ。
これが私たちの言う、“狩る”。
長く感じたかもしれないが、わずか1分。
闇夜のヤツの体内構造がよくわからないが、死角を突くと消滅する。
……まぁ、私の場合確実に消滅するけどね。
「さすが美月さんです!」
結衣は目を爛々と光らせ、感激。
もぉ~!結衣可愛すぎ!
「……まさかこんなにやるとは。」
安曇は驚きを隠せない。
私はその顔を見れただけでとりあえず満足だった。