<短編>ただ、傍に居て
ただ、傍に居て
私の家族は至って普通だった。

しかしその"普通"が一瞬にして崩壊した
きっかけは両親の離婚。

一人っ子だった私は
母親に引き取られ
祖父母の家で暮らす事になった。

しかし、二人は私を歓迎してくれなかった。

母親は何も言わない。

これからの生活は
きっと、つまらないだろう。

愛してなんて言わないから
ただ、傍に居て……

。.・◆・.。*†*。.・◆・.。*†*。.・◆・.。

祖父母の家に
引っ越してきてからもうすぐ
一年が経とうとしている。

相変わらず必要最低限の
ことしか話さない。

学校はつまらないし、
母親は昼は仕事に行っている為
私と祖父母の事は知らない。

離婚してから、家の事には無関心。

私も高校生だから、
干渉されるのは好きじゃないが
無関心というのは違った意味で
悲しいものがある。

そんな事を
今更言ったところで
状況が変化するはずもない。

私は人に
期待する事を辞め、
必要最低限の作り笑いと
距離を置く事を覚えた。

でも、お母さんには
気付いて欲しかった。

まぁ、それは、私の願望で
現実はそんなに甘くないんだけどさ……

。.・◆・.。*†*。.・◆・.。*†*。.・◆・.。

あれから十年……

私は二十六歳になった。

祖父母とは少しだけ、
話すようになった。

結局、お母さんが
私の孤独に気付いたのは
高校を卒業する頃だったけど嬉しかった。

それからは仕事の時間を
短くして、私の傍に
居てくれるよになった。
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