愛をくれた神様
かおりの話・男の子・
私がつとめる病院の看護士は、特別忙しいと言われている。
入社する前から実習を何回か経験したものの、なかなか仕事が慣れなかった。臨機応変に動かなければいけない病棟での当番より、サマリーを書いたり、患者さんと雑談をしているほうが性に会っている気がした。
先生の診察につくのが一番嫌いな仕事かもしれない。
「白井さん。」
きつい声が後ろから聞こえた。
「3号のこの人とこの人の退院、薬局と、会計に連絡したの?」
「すいません…」
ため息まじりに背中を向けられる。
先生から退院の指示を受けたのは私ではなく、同期で同期は何を思ったのかそのカルテを私のほうに投げた。
私は他の診察を担当していたが、私の仕事になっていたようだった。だが、患者さんに迷惑をかける事はあってはならないことだった。
逃げ出してしまいたい。
時々心が叫ぶ。
空けた窓から、タバコの匂いと、食堂の匂いがする。そしてセミの声。
「今週いっぱいは、雨は降らないでしょう。」ラジオから天気予報が流れてくる。