愛をくれた神様

「お兄さん、見つかった?」


彼女が何気なく、聞く


「いや、いないよ…。」


僕は言った。


兄は、いない。


お葬式は、15年前にしたが、遺体はずっと見つからないままだ。


寂しいと思った事はない。 父は、兄はいつか帰ってくると信じているし、母もそう言っていた。


父はいつも家をあける。 たぶんそれは 兄を探すためだ。


僕には分かる。


なぁ お兄ちゃん。

 僕は時々問いかけをする。


あの時、ずっと家にいたら、山で生き埋めにならなかったかもしれないし、おやじもあんな風にならなかったのかも知れないじゃないか。


あんたのせいだよ。


不謹慎ながらも 僕はそう思うのだった。
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