愛をくれた神様
「…。」
あの焼き肉の日、裕樹はだまってビールを飲みほした。 そして、あっさりとこう言ったのだ。今までで一番、優しい話し方だった。
「とりあえず、ちゃんと、病院で確認しよう。」
「…。」
私は、うなずいた。
目頭があつくなり、心の中にため込んでいた寂しさが、あふれて手のひらにポタポタと落ちていった。
どうしてだろう。
この人といると、自分がつぶれてしまう。時間の無駄だし自分が傷つくだけだと思うのに、こうやって、手を触れられ、間近で顔を覗きこまれたら、私は何も逆らえなくなり、彼の優しさに涙さえ流してしまうのだった。
「わかった。休みの日に病院に行く。また電話するね。」
約束をした。
会計をすませ、彼は私の肩に手をおき、お店の前だというのに、強く抱きしめた。
「…悩ませて、ごめんな…。」
それには答えず、されるがままになる。ずっとこうして欲しかった。 仕事も、友達のことも、こどものことも忘れ、彼の胸にいたい。
いつか交わした約束通り、ずっと彼と一緒にいたい。
そんな事を、私は願っているのだった。
「俺、行かないと。」
彼は携帯を出した。
「いくの?」
彼ともっと一緒にいたかった。
「明日は、夜までバイトなんだ。朝も早いからな。」
彼はそういい、駅の入り口へ消えて行ったのであった。