愛をくれた神様
「別れた母親でもそれぐらい分かるもんだよ。どうしたのこのハガキ?。」
僕は母に、事情を話した。
「なるほどね。…まぁ、たしかに和志がこれを出したとして差出人の住所が大阪市なのはおかしいわね。」
母は、ふといGパンの足をくみ首をかしげた。僕は、母が兄の名前を、さらっと口にするのが不思議な感じだった。
父は兄の死を今でも受け入れられずにいる。
だが、母は父とは反対に、兄の死を早々と受け止め、引っ越したばかりの僕たちの家に通い詰めては、兄がいない今学校が終わったら誰が僕の面倒を見るのかとか、1人っこになってしまった僕に料理や勉強の方法など、某国の司令官のように、あらゆる指導をした。そうしないといけないくらい、あの時は父も僕も参っていた。兄の仏壇や墓の事は、全て母がしてくれだ。
そんな母をたくましいと思っていたが、いくらたくましい母でも、息子の突然の死は信じられないくらい受け入れがたかった事だろう。
やっぱり、別れて暮らしていても僕たちは親子なんだなぁ…と、今は関係のない事を思った。
母は、文字を指でなぞり、しばらく凝視していたが、やがて口を開いた。
「この…大阪市の住所の字…和志の字じゃないわね。あんたの字でもなさそうだし。」
「え?。」
母は、字を指さし、言った。
「和志の字は字の大きさがばらばらだけど、左右対象に近い。それなのに、この字、少し右上がりじゃない?。」