愛をくれた神様
かおりの話・さようなら
携帯が鳴った。予想通りの相手だ。
呼び出されるまま、私は、裕樹の行きつけの、お店に行った。
裕樹は、めずらしく1人だった。
いつも煙草を吸う彼が、今日座っていたのは禁煙席だった。 彼は、私を見、私が風邪を引いた時みたいに、心配そうな顔をしていた。
ふと、裕樹と2人だけになるのはだいぶ久しぶりだった事を思い出し、胸の奥が熱くなる。
私だけを見てくれた頃の、普通の彼氏でいてくれた裕樹がもう一度、目の前にいる。
揺らぐ心を押さえる。彼は必ず誰かと一緒だった。私はいつも一番最期に呼ばれた。 いつもそこにいるグループの男の子たちの中で、彼女がいるのは裕樹だけだった。まるで、私は裕樹を良くみせるアクセサリーだった。その事を忘れないよう、ぐっと自分の決意に刻みこむ。
私は深呼吸をして笑顔を作った。彼が好きだと言う私の笑顔だ。