愛をくれた神様
私は哀れなこの人を見た。
ちょっと頭と顔がいいからって、自分は特別な人間だと思っている。
こんな風にしてしか、人と接する事が出来ないのだ。
もちろん、振り回されたばかりの思い出だけではない。 いいところもたくさんあった。東京に出てきたばかりの、寂しさを埋めてくれた。病気の時ごはんを作ってくれた。 誕生日に、服を買ってくれた。 不安になり何も言えずにいた時、何かをさっし、遠いところに連れて行ってくれた。
彼ばかりが悪い訳ではない。
そんな人だとわかっていながら、自分の事を棚に上げ、周りに愚痴り付き合っていた私も私なのだ。
だから、恵美に小馬鹿にされたり、一方的に高校からの親友だった香奈に不信の目を向けられたりしても、仕方のない事なのである。
でも、この人は、こんな私でも愛してくれた。
やっぱり好きだ。
悩んだ末最後に出した結論はいつもこれだった。 指も、さらさらの髪も、大きな目も、全てが愛しかった。
その手に初めてふれられた、あの時を思い出す。
体があつくなる。