愛をくれた神様
「私、裕樹の事すきだよ。」
私は言った。
彼の指の動きが止まる。きつかった彼の表情がゆるんだ。
「…俺も、好きだよ。」
かちゃり。
彼の返事とともに、無意識に触っていたコーヒーカップが音を立て、時間が止まる。
私と彼の、最後の、2人だけの時間。
「…裕樹、今日で、お別れしよう。」
私は言った。 え…と裕樹の表情が固まる。好き、と告白した後に、別れようなんて言われるのなんて早々ないだろう。
「私、考えたの。赤ちゃんを産んで、働きながら保育園に入れて小学校に入れて勉強教えて、そうやって育てていく事って、裕樹と恋愛するより、友達と向き合うより、看護士の仕事より、ずっとずっと難しい。そんな難しい事を決意できたんだから、自分は本当はもっと色んな事が出来るんじゃないかって思ったの。 」
彼の表情は変わらない。 それでも私は続けた。
「裕樹に対して怒っている自分も、仕事が辛くて泣く自分も、色んな事が滑稽に思えてきた。私気づいたの。私、たぶん弱かったから、独りになるのが怖かったから、裕樹と一緒にいたかったんだと思う。」
私は立ち上がる。