愛をくれた神様
立ち上がり、350円ちょうど、自分のぶんの会計を出す。
彼は、まだ信じられない、と言った様子で私を見ていた。
「さよなら。恵美ちゃん、香奈ちゃん、川上くんと、仲良くね。」
これは、私なりのふんわりした皮肉だ。その事に彼は気づいただろうか。
そう言って私はお店を後にした。
お店で裕樹と向かい合った最初の一瞬は、胸が熱い想いだったのに、今は、さわやかな気持ちだった。
今度こそ、本気だ。
そして彼が私の別れを受け入れるのも、今度こそ本当だろう。
私はわざと妊娠していない事実を濁した。彼は私が本当に彼の子を宿していると思ってるのかもしれない。それでいいのだ。
子供の父親になれば、誰も彼を「かわいそう」と思わなくなる。彼は自分が一番ほこらしく、何をしてでも「かわいそう」と思われたい人なのだから。
たぶん彼が、強引に引き止める事はないだろう。