愛をくれた神様
「これ…見覚えあるかな?。」
僕は、父にハガキを差し出した。
「最近うちに戻ってきたんだ。宛先とかの字、兄貴の字だと思うんだけど…。」
今日、母に会ってきたんだとは言いにくかった。
「…。」
父はだまってそれを見ると、僕からハガキを受け取った。 メガネをかけ、まじまじとそれを見る。
どくんどくん…と心臓が鳴る。
思えば滑稽な事だが、父と、兄について語った事は一度も無かった。父だけは兄を生きているものだと信じていたし、誰が否定しても兄のことを自分の責任だと悔やんでいた。そんな父に、どう兄の死を語ったらいいのか分からなかったのだ。
このハガキを見せたら、父は絶叫して怒り狂うのではないか、という恐怖があふれた。
ところが、父の反応は予想外なものだった。
「ああ…これ、覚えあるわ。お前がよく書いてたじゃないか。」