廻音
恋愛休業中
恋愛休業中、と淡々と言ってのけた姉は
慈しむようにティーカップを両手で包む。

包んで、それから口に含むことはしない。
姉が大好きなアップルティーが運ばれてきてから30分は悠に超えた。
冷えきっている事は確実だ。

ただ包んで、それから執拗にかき混ぜるの繰り返し。

さすがに呆れてしまい「お姉ちゃん、砂糖もいい加減溶けたんじゃない?」と簡潔に適切に愚痴と忠告を漏らす。
砂糖を入れていない事など初めから判っていた。

ポカンと私を見つめる姉は、それから漸く自信の不審に気付いたかのように、ふふ、と笑みを溢した。
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