廻音
喫茶店を出ると真昼の陽射しが容赦なく降り注ぐ。

一刻も早く空調の効いた室内に逃げ込みたい。
この陽射しでは、素早く動き回る気も起きないけれど…。

ノロノロと歩みを進めながら、姉がふと立ち止まる。
特徴も何も無い路地の途中。
電信柱をただジッと眺めている。

見上げてみても珍しい物なんか在りはしないし、日陰になりそうな物すら無い。
こんな所に立ち止まるのは、どう考えても賢明ではなかった。すごく、そう思う。

「何?」

溜め息と共に口から飛び出したソレは、自身でも驚く程の冷気を帯びる。
沸点が低い。
私の悪いところ。

しかし姉は、それを咎める事はしなかった。
私の声なんて聴こえてすらいなかったのかもしれない。
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