廻音
「本当…ごめんなさい。
同性の私から見ても本当に可愛い方なのでつい…。」

彼女はまだクスクスと可笑しそうに笑いながら、「いいえ。ありがとうございます。」と微笑んだ。

「えっと、何かご用でしたか?」

問えばピタッと笑いを収め、「あぁ、そうでした!」と私に向き直る。

「もう直ぐ彼の誕生日なんです。プレゼント選びに困ってて…。
たまたま通りかかって、ショーウィンドウのディスプレイが可愛かったから気に入っちゃって。
あ、『私が』、なんですけど。

女の子向けのお店なのかなぁって思っても、男性に合う物もあれば良いなって。
でも私、男性にプレゼントとかあんまり経験がなくて…。
何かオススメがあればアドバイスをいただきたいんです。」

そう話す彼女からは、一生懸命さと愛情が伝わって、協力したいと自然と思えてくる。

「私のオススメで宜しければ。」と返すと、彼女は悩んでいた表情を雲間から射す太陽みたいにパァッと輝かせた。
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