廻音
見上げた空は、目が釘付けになる程の赤だった。

「さむ…。」

昼間の気温に合わせた服装は、夕暮れ時にはさすがに肌寒い。

ふと立ち止まった路地は、いつかの夏の日、姉と別れた路地だった。
あの日の寂しそうな表情。
伸ばした右手。
何も掴めなかった掌。

ねぇ、お姉ちゃん。何を掴みたかったの。
< 175 / 213 >

この作品をシェア

pagetop