廻音
「廻音ちゃん。ありがとう。
ありがとう以外、ありがとうを伝えられなくて悔しいね。
それ以上の言葉で、君にありがとうが伝えられないんだ。

廻音ちゃん。俺は君のおかげで歩き出せる。
こんなにも輪廻に希望が持てたのは、絶対に君のおかげだ。

ありがとう。…ありがとう。

輪廻に、会いに行くよ。」

「…はい。黒雅さんが前を向けたのは強い想いが在ったからです。
きっかけを作ったのが私だったとしても、でも、あなたの愛があなた自身を支えたんですよ。

大丈夫です。胸を張って!お姉ちゃんを迎えに行ってあげてください。」

グッと握り締めて黒雅さんに突き出した拳に、そっと彼の手が触れて、ありがとう、と掠れた声が届く。

聖者の様な、溶けそうな微笑みが、あの日と同じ赤い夕暮れに映える。

ずっと忘れる事はない。彼の想いを。
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