廻音
真っ暗にした部屋。
來玖さんの胸の動きを右耳に感じていた。

枕にはそれぞれの好みがある。
硬さとか、高さとか、素材とか…。
私はやっぱり、腕枕が一番好きだ。
來玖さんの腕枕が。

「ねぇ。來玖さん。」

「んー。どうした?」

静かに呼吸を繰り返していた彼の声が小さく闇を震わせて、
何故か少し、ドキンとした。

「朗報よ。黒雅さんと会うのもあと一回で終わるかもしれないの。
安心した?」

「へぇ。遂に諦めたの。りんちゃんの事。」

「もう…!その逆。お姉ちゃんに会いたいって。
一応ね、立会人…って言うのかなぁ。私も付き合うんだけど。
上手くいけば、あとは若い者同士でーってやつ。」

「そう。お疲れ様。いつ?」

「明日よ。」

「明日。随分急だね。」

「善は急げってね。
お姉ちゃんには遊びに行くからって約束は取り付けてあるの。
十八時頃に行ってくるわ。
サプライズ、サプライズ。」

「そうか。…やけに楽しそうだね。」

「やっと黒雅さんの想いが届く。お姉ちゃんも同じ想いなら…ううん、きっと…。」

「廻音?」

「…ううん。何でもない。
來玖さん、ごめんね。今まで不安だった?」

「廻音を信じてる。」

「私もよ。」
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