廻音
ゆっくりとドアノブを回して、開け放たれたドアの向こう側に、泣きそうな目をした黒雅 夜が立っている。

「夜くん…。なんで…。」

「輪廻。ただいま。」

掌で顔を覆ってすすり泣く彼女に、黒雅さんは優しく頭を撫でた。

「ごめんね。輪廻。会いたかった。」

「お姉ちゃん。玄関じゃ可哀想だよ。
上がってもらったら?」

姉はコクンと小さく頷いて、彼が入れるように右にずれた。

「お邪魔します。」と慈しむように見回して、彼が入ってきた。

とてもとても、愛おしそうに。
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