廻音
落ち着いた姉が口を開く。

「廻音、知ってたの?」

「ごめんなさい。ずっと黙ってた。
黒雅さんから手紙がきたの。八月の中旬よ。
それから何度か黒雅さんと会って、お姉ちゃんに想いを伝える為に、二人で作戦会議してたの。」

「想い、を?」

「輪廻。三年前、君をとても傷付けて、君を失って、でも俺の想いは消えなくて。
ずっとずっと君との思い出だけを支えに生きてきた。

あの日、約束したよね。
君との未来を叶えたい。
今も月城 輪廻だけを愛している。」

頬を真っ赤にして俯く姉は、泣いている筈だ。
黒雅さんはテーブルの上で緩く握られた姉の手を、自身の掌で包み込んだ。
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