廻音
「…は」

最初に鼓膜を揺らしたのは、思いがけず私の声だった。
意識せずに、けれど本音の声。

「お、お姉ちゃ、ん…。どういう…。」

「難しくないでしょう。そのままの意味よ。
夜くん。私はもう、あなたを愛していない。」

「輪廻…。」

感情が読み取れない黒雅さんの表情は、しかし震える指が、するりと彼女の掌から滑り落ちて、絶望を語る。

「お姉ちゃん。さっきの涙は、」

「邪魔しないでよって思ったのよ。」

「邪魔?」

來玖さんが「廻音、俺だけを信じて。」と言う。
こんな時に何を言っているの。

黒雅さんは呼吸を整えながら言葉を吐く。

「邪魔って、どういう事。」
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