廻音
「あなたを失って、あなたの想いを識って、いつか必ず絶対に成就出来ると、三年間ずっと信じて生きてきた。
一日だってあなたを忘れた事はない。

実態の無い思い出の中で、聞こえない声、触れられない躰。苦しくて、それでも『黒雅 夜を忘れない事』が支えだった。

でもね、『本物』には負けちゃった。
実態があるって、武器なのね。

廻音、あなたが羨ましかった。
思い出じゃない、現実に愛されて。大切にされて。

もう戻らないかもしれない不確かな愛は苦しい…。
壊れそうな想いを救って欲しかった。

ごめんね。ごめんなさい。
あなたの携帯から來玖さんの番号とアドレスを抜いたの。
廻音の事だから本当は知ってたんでしょう?

彼と会うようになってからね、廻音よりも私を愛してって、私必死になった。
その度に來玖さんは私を諭すの。
夜くんの事、二人の未来を信じろって。
今だけの過ちに騙されるなって。

でも逆効果。その度に私は來玖さんを好きになった。
彼の、廻音への想いが本物だと感じる度に、自分のモノにしたくなった。
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