廻音
「これ以上廻音を傷付けるなら…。」

「やめ…やめ、て。やめて!」

「廻音…。」

「來玖さん。その手を離して、直ぐに。」

「…分かったよ。廻音が言うなら。」

解放された姉は呼吸を整えながら、そしてそれすらも愛おしそうに來玖さんが触れた喉もとを撫でた。

「夜くん。私は、消えたあなたを結局信じきれなかったの。
触れた來玖さんの温かさは、私のモノにはならなかったけど。

あなたが好きだった輪廻はもう居ない。」

もう、「二人が夢みた輪廻は無い」のだと、言い渡す。
あれ程までに欲した成就は叶わない。

二人の恋は死んだのだ。
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