廻音
5
瞬きを繰り返し、幾度目かの瞬きの後、次に瞳に映ったのは白く霞んだ窓の外だった。



………?

おかしい。
そう。私は「瞬きを繰り返した」だけなのに。
まるでタイムスリップだ。
立ち込める煙の臭いでさえ消え去り、今は微かに冷気を帯びた夏の朝。
隣にスヤスヤと幸福そうな寝顔が在る。

眠りに就く前の記憶がまるで無い。
だって、瞬きをしただけなのに。
それ程睡魔に襲われていたという自覚も無かったが、私にとっての一秒前は、確実に「昨晩」らしい。

取り敢えず折角彼も居るのだし、たまには朝食でも作るかと起き上がる。
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