廻音
気にしないでと言われても、いくら交際相手だろうが他人が自室で何時間も待ってくれているのに、気にならないわけがない。

「あの…この部屋、何も無いですよ。退屈じゃないかなぁ。
何処かで時間潰すとか…。」

事実、この部屋には何も無い。
衣類やタオル類用に購入した収納ケースが数個と本棚にラック。
それから必要最低限の台所用品。
それにしたって基準を遥かに下回り、少なめだと思う。

今時大抵何処の家にでも存在しているであろうテレビの姿は見受けられない。
主が「必要のない物」と考えているからだ。

音楽機器も無ければ、辛うじて存在している書物は少女漫画が多数に、完全なる趣味で集めた小説達。
來玖さんが興味を示すとは到底思えなかった。
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