廻音
7
腕時計に目をやると、短針が12、長針が5を少し過ぎたところだった。
待ち合わせは12時30分。
自宅から御伽噺までは徒歩で10分かかるか、かからないかくらいだ。
十分、余裕がある。
とても厳しい暑さの中。
ゆとりを持って歩ける事は有難い。

太陽が木々を照らし、葉がアスファルトに影を作る。
腕時計の文字盤を覆うガラスが道沿いの塀にキラキラと反射している。

じっとりと背中に感じる汗は不快で、「早く終わればいいのに。」と夏を嫌う。

毎年同じ。
終わる頃にはどうせ、言い様のない寂しさを感じるのに。
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