廻音
「弥生さん!お久し振りですー!」

「本当に、久し振りね。
ツッキーはたまに此処に来るのよ。廻音ちゃんに会うのはいつぶりかしら?
それにしてもあなた達って…本当にそっくりね。」

クスッと笑みを溢す弥生さんが、何だかとても懐かしく感じた。

「ツッキー」とは姉の事だ。
名字である「ツキシロ」からきている。
「何だか間抜けな感じがするから」と「ツッキー呼び」の廃止を呼び掛ける姉を面白がって、一向に止めるつもりはないらしい。

姉のバイト先が変わってからは、此方側の御伽噺に顔を出す事は随分減った。
柚子姫ちゃんと待ち合わせする時くらいだ。

弥生さんは何時も私達姉妹を見ては、そっくりだ、と言っていた。
その度に私は何処に居たって姉の存在を強く意識する。
いつも私の先には姉が居て、私一人では消えてしまいそうな気がして…。

黒く汚いモノが躰中を支配していく感覚が気持ち悪くて、ギュッと目を閉じた。
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