廻音
「ユズと待ち合わせなんでしょ?」
不意に耳に届いた弥生さんの柔らかい声で、ハッと我に返る。

「あ…はい。」

「春ちゃんに聞いた。
ユズが来るまでお茶付き合ってよ。」

あれ、そう言えば、と今さらながら気が付いた。
弥生さんが「客席に居る」違和感。

「弥生さん、今日は『お客様してる』んですか?」

「うん。今日はお休みでね、彼も早上がりだから、たまには映画にでも行こうかって。
春ちゃんが終わるのを待ってたんだけど…。
退屈で死にそうだったんだぁ。
廻音ちゃん、タイミングバッチリよ!」

OKサインを指で作りながら弥生さんはニカッと笑う。

「仲良しは健在なんですね。」

そう?と照れ笑いを浮かべた彼女は、とても幸せそうだ。

日常会話を数十分繰り返した後、
「「お待たせー!」」と二人の声がしたのは同時だった。

「「さすが兄妹。共鳴した。」」

と弥生さんと笑い合う。
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