廻音
柚子姫ちゃんが席に着き、弥生さんが席を立つ。
二人は、またね、と手を振り店を後にした。

「ごめんねー。遅れちゃった。」

「遅れちゃった」といっても10分程度だ。
全然構わなかった。

柚子姫ちゃんと会うのは一ヶ月振りくらい。
世間が長期休暇に入り、柚子姫ちゃんと姉が勤める御伽噺は学生達の利用が増え、稼ぎ時らしい。
シフトが増え、バイト、それから大学の課題と追われ、多忙な日々を送っている様だ。

「たまの休日なのに来てくれてありがとう。」

柚子姫ちゃんとはとても気が合う。
話し出すと文字通り時間を忘れてしまう。
この一ヶ月で積もる話もあるし、こうしてお茶が出来る事は素直に嬉しかった。

「そんな事、気にしないのー。会いたかったのは私も同じだよ。」

柚子姫ちゃんのこういうところ、すごく好き。
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