廻音
「この前さぁ、えーっと、先週くらいかな。
輪廻先輩のマンションの近くに公園があるでしょ。
其処に居たのよ。黒雅さん。
頻繁に会った事があるわけじゃないけど、ほら、あんなに綺麗な人。そうそう忘れないじゃない。黒雅さんで間違いないと思う。
何してるんだろうって思ったけど、声をかけたところできっと私の事なんてもう記憶にも無いだろうしね。
ひょっとして輪廻先輩と待ち合わせなのかなぁって思ったんだけど。」

「黒雅さんが近くに居た。」
その事実に何故だか胸騒ぎがした。

「そう…。」

待ち合わせなわけがない。
姉は黒雅さんはもう、手の届かない所に行ってしまったと思っている。

恐らく彼の目的は、いや絶対に姉で間違いはないだろう。
直接接触しない理由は判らない。
判っている事は、何かが動き出そうとしているって事だけだ。
< 45 / 213 >

この作品をシェア

pagetop