廻音
「黒雅 夜」

抗えないのは、その並べられた文字のせいだ。

どんなに反抗してみても、「必ず逃げ切れないだろう」と自信たっぷりに、その文字は堂々と居座っていた。

まるで時限爆弾でも仕込まれているみたいに、恐る恐る手を伸ばす。

カサリと音を立てて、触れたら本当に、もう後には退けない。

この中身に詰まっているモノが過去か未来か予測なんて出来ない。
もしも覗いたその人は、あの夏を夢にみるだろうか。




いや、望んだ未来へ、還れるのだろうか。
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