廻音
「…ーあ、れ?」



「偶然」と言っても良かった。
穴が開く程に眺めていても何かが起こるわけじゃないけれど、ただただ目が放せずに、握り締めた其れに
「何かが起こった」のは…。



よく確かめようと、電気の光に透かして目を凝らす。

四角い封筒の中には、更に一回り小さめの四つ角が在った。
普通に考えれば、手紙なのだから封筒の中身は便箋だと決まっている。

「黒雅 夜」と、其処に気を取られ、差出人の方、つまり裏側にしか興味が無かった。

表側、受取人の方へ裏返す。

「月城 廻音 様」

ギュッと心臓を掴まれた思い。
反射的に数秒、呼吸を手放す。
静寂の中。無音が耳に痛い。

そうだ。
思い返せばあの時、來玖さんは「これを君に」と言っていたんだ。
差出人からして確かめるまでもなく、「私に」ではなく「姉に」だと決め付けていた。

此処に並ぶ文字は「月城 輪廻 様」であるべきなのに、「廻音」の文字が確実に其処には在った。
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