廻音
「その時」は、あっさりと訪れる。
ウキウキした気分ではなく、どうしよう、だとか不安な気持ちが大きい分、尚更だった。

時間は15時指定。
基本的に待ち合わせには早めに着きたい。
しかし今回の相手が「彼」なだけに、先に着いた私を遠目から確認(もしかすれば観察)される事は、正直愉快ではなかった。
それは彼に対する先入観や偏見かもしれない。
それでも私の中の「予備知識」がそうである故、致し方ない。

待ち合わせの場所へゆっくりと歩を進めながら、今朝を思い出す。
一番に気が重たかった、來玖さんへの説得だ。
< 85 / 213 >

この作品をシェア

pagetop