センセイ達の内緒話



「そういうつもりで言ったんやないんです。別に姫華にだけ会いに行くわけじゃないし・・・・・・サッカー部みんなに会いに行くって意味やったんやけど・・・・・・」




青山先生は顔を真っ赤にして言い訳をした。


手に持っていたお酒はからっぽになっていた。




「素直になったらええのに。俺達の中では、隠すことないやん」



黒岩先生はニヤニヤしながら、ふたりの顔を交互に見た。




「そんなこと言って、黒岩先生は小阪に全部話すんでしょ?」



「そうですよ。絶対筒抜けやん」



青山先生と緑川先生にそう言われた黒岩先生。


小阪というのは、黒岩先生の彼女、というか・・・・・・好きな生徒。


付き合っているわけじゃないけど、お互いに好きだということを言い合っている。




「言わへんよ。だって、言ってしまうと残酷やん。あの子らは純粋やから、俺達の気持ちを全部知っちゃうと・・・・・・かわいそうな気がする」



真剣な表情でそう言った黒岩先生に、緑川先生が言う。




「俺は残酷なことをしてしまったんやな。大越に、“好きやった”なんて言ってしまったから・・・・・・アイツは、今も苦しんでるかもしれへん」



大越瑠美。


黒岩先生の好きな生徒、小阪萌美の親友。



姫華ちゃんと萌美と瑠美は、仲よし3人組。


3人そろって、教師に恋をしてしまった。






「そうっすね。大越は、緑川先生の幸せを願っているらしいですよ。それを聞いて、小阪が泣いてた。大人になんかなりたくないって言ってましたよ」



黒岩先生は、遠い目をしてそう言った。




「お見合い相手と結婚しようと本気で思った。だけど・・・・・・ちっともその話は進まなくて・・・・・・俺の気持ちが全く動かへんからどうしようもない」



瑠美への気持ちを封印して、お見合い相手と結婚すると決めた緑川先生だったのに、結婚話は進んでいない。



「それって・・・・・・ねぇ?」


青山先生が流し目で黒岩先生を見た。



「ん~、完全に引きずってるんちゃいます?」



と黒岩先生がストレートに言った。






「あきらめるって決めたのに、毎日大越の顔見てまうから・・・・・・やっぱり気になってしまうんや」



「それって、本気で好きなんちゃいますか?」



真剣な表情の黒岩先生。




「気持ちわかるなぁ・・・・・・俺は、緑川先生みたいに正直に気持ちを伝えられへんかった。姫華の気持ち知ってるのに、そのことに触れずに転勤した。ズルいんかな、俺って」



青山先生は、自分の髪を手でぐしゃぐしゃにした。


乱れた髪型もまた似合う。



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