Happy Moon
pink
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私の夢はお姫様になる事。
ふわふわの可愛いドレスに身をつつんで、かっこいい王子様と一緒に
おっきなお城に住むの。
『まま、どーしてくるみはお姫様じゃないの?くるみはお姫様になれないのー?』
私が首を傾げてそう言うと、母は微笑んでいった。
『くるみはまだ卵なの。』
その答えに私はさらに深く首をかしげる。
『…たまごー?』
『そうよ。お姫様の卵。くるみがもっと大きくなって、背も髪もぐーんと伸びた時には立派なお姫様になれるわ』
…お母さん。それは違うんだよ。
大きくなってお姫様のようになれるのはほんの一握り。
それが現実。
お姫様になれるのは、ふわふわやキラキラが似合う可愛い女の子だけ。
私なんかじゃ、到底なれないの。
けど、今でもシンデレラの絵本を手放せない私は、心のどこかで
いつかはお姫様になれると信じているのかな。
お母さん。私…もっと、可愛く生まれたかったよ。
「ー…小野寺‼‼‼」
「は、はいっ‼」
先生の怒声にハッとする。
「問2の答え、分かるか。」
「はい、あ…えと、…lazyです。」
慌てて答える私に先生が怪訝な顔をする。
「小野寺が授業中にボーッとするなんて、珍しいな。
テストも近いし、気を引き締めていけよ。」
「はい…すみません。」
私が名門校である、私立御園高校に入学してもうすぐ半年がたつ。
高校生活には慣れてきたものの、一つだけどうしても馴染めないものがあった。
短いスカートに長いつけまつげ。オシャレなピアスにネックレス。
高校生になると変わると言うけれど、こんなに変わるものなんだろうか。
地味な私と違って、皆オシャレでキラキラしてて…。
正直、半年前とはあまりに違いすぎる周りの景色に、自分だけが取り残されたような気分がしていた。