蜜色トライアングル ~Edges of precise jade



「……っ!」


どういう状況なのか全く把握できず、圭斗は眉根を寄せた。

……これはどう見ても、『情事のあと』だ。

しかしそれにしては男がいないのはおかしい。

それに、そんな現場に他の男を呼びつける意味がわからない。


木葉は圭斗に気づいた様子もなく、荒い息を繰り返している。

木葉の様子を食い入るように凝視していた圭斗は、木葉の様子が普通とは違うことに気が付いた。


「……?」


見ると、ベッド脇のテーブルの上に赤ワインのグラスが置いてある。

グラスは二つあり、片方にべったりと口紅がついている。

その脇には水の入った瓶と、ロックグラスが一つ。

その横にアルミの薬のガラが落ちている。


「……薬か?」


圭斗はガラを裏返し、薬の名前を確認した。

そこには『タルゾート錠』と印字されている。


圭斗はその名前を記憶の中に探った。

内科用の薬ではないし、薬事認定されていく薬ではない。

産婦人科の友人が前に言っていたが、確かこれは……。


「……催淫薬?」

< 10 / 161 >

この作品をシェア

pagetop