蜜色トライアングル ~Edges of precise jade
「……っ!」
どういう状況なのか全く把握できず、圭斗は眉根を寄せた。
……これはどう見ても、『情事のあと』だ。
しかしそれにしては男がいないのはおかしい。
それに、そんな現場に他の男を呼びつける意味がわからない。
木葉は圭斗に気づいた様子もなく、荒い息を繰り返している。
木葉の様子を食い入るように凝視していた圭斗は、木葉の様子が普通とは違うことに気が付いた。
「……?」
見ると、ベッド脇のテーブルの上に赤ワインのグラスが置いてある。
グラスは二つあり、片方にべったりと口紅がついている。
その脇には水の入った瓶と、ロックグラスが一つ。
その横にアルミの薬のガラが落ちている。
「……薬か?」
圭斗はガラを裏返し、薬の名前を確認した。
そこには『タルゾート錠』と印字されている。
圭斗はその名前を記憶の中に探った。
内科用の薬ではないし、薬事認定されていく薬ではない。
産婦人科の友人が前に言っていたが、確かこれは……。
「……催淫薬?」