蜜色トライアングル ~Edges of precise jade



木葉は圭斗に連れられ、繁華街の裏手にある小さな川のほとりに来た。

幅10メートルほどのその川は、幼い頃、圭斗や冬青、由弦と何回も遊びに来た川だ。

川の両脇には散策路が整備され、つつじなどの木々が整然と植え込まれている。


川の水面が残照を反射し、錆色に輝いている。

木葉は圭斗に手を引かれるまま、川沿いの遊歩道を歩いていた。


「……」


圭斗は何も言わない。

いつも大人で、優しい微笑みをくれる圭斗が……今日は無表情だ。


「圭ちゃん」

「……」

「ねぇ圭ちゃん、どうしたの?」


木葉が足を止めると、圭斗も足を止めて木葉を見下ろした。

その瞳には木葉がこれまでに見たことのない、苦しげな影がある。

木葉はそれに気づき、圭斗の手をきゅっと握りしめた。


「何かあったの?」


木葉が聞くと、苦しげな影は更に濃くなる。

木葉は眉根を寄せた。


「……圭ちゃん?」

< 100 / 161 >

この作品をシェア

pagetop