蜜色トライアングル ~Edges of precise jade



圭斗は苦しげな眼でじっと木葉を見つめていたが、やがて目をそらした。

何かを押し殺すように、ぐっと瞳を閉じる。


……やがて。

圭斗は穏やかな瞳で木葉の方に向き直った。

その表情も眼差しも、木葉が良く知るいつもの圭斗だった。


「ごめん、木葉」

「……」

「なんでもないんだ。……心配させて、ごめん」


圭斗はにこりと笑う。

その微笑みはいつも木葉にくれるものと同じだ。

何か無理をしているような笑顔だが、圭斗が言わない以上、木葉から聞くこともできない。


――――圭斗は大人だ。

きっと木葉に言わなくても、自分の中で解決できるのだろう。

しかし……木葉は違う。

まだそこまで大人ではない。


「……」


木葉は圭斗に言うべきことがあるのを思い出した。

しかし……。


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