蜜色トライアングル ~Edges of precise jade
圭斗のように正面から言う勇気はない。
圭斗の微笑みの前で自分の気持ちを説明することはできない。
きっと見てしまえば好きだという気持ちが湧き上がり、自分の心はどうしようもなく乱れるだろう。
木葉は圭斗の手を離し、遊歩道を歩き出した。
「……ねぇ、圭ちゃん」
「なに?」
「ひとつ、お願いがあるの」
木葉が言うと、圭斗が背後でくすりと笑った。
いつもの圭斗の笑い方だ。
「お前がお願いなんて珍しいね。……言ってごらん? おれにできることなら何でもしてあげるよ?」
優しい声が背に響く。
圭斗の優しい視線を後ろに感じる。
――――大人で優しい圭斗。
その声に押されるように、木葉は意を決して口を開いた。
「……私、圭ちゃんと距離を置きたいの」
その瞬間、圭斗の靴音が止まった。
二人の間に静寂が満ちる。
――――氷のような静寂。