蜜色トライアングル ~Edges of precise jade



「思い出した? 木葉」

「……んーっと……」

「あのホテルでもこうして水を飲ませたんだけど。……まるで雛が親鳥に餌をねだってるようで、可愛かった」


くすくすと圭斗は笑う。

圭斗の言葉に、木葉は何かが心の隅で引っかかるのを感じた。


あの時、自分は圭斗と体を重ねたと思っていた。

でもあの時とは、体の感覚が明らかに違う。


「……ねぇ、圭ちゃん」

「ん?」

「私、あのホテルでのこと、あんまり覚えてないんだけど……」

「……」

「でも……なんか……その……」


木葉は眉根を寄せて呟くように言った。

……何かが釈然としない。


木葉の言葉に、圭斗の顔からすっと笑いが消えた。

怪訝そうな顔をする木葉に、圭斗は辛そうに目を細めて言う。


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