蜜色トライアングル ~Edges of precise jade



「ああ。……二人は、冬青が6歳のときにわしと花枝で引き取った。もともと二人は、花枝の弟・正人の子供だ」

「……えっ?」


木葉は驚き、目を丸くした。

正人は木葉にとっては叔父にあたる。

父は昔を思い出すように続けた。


「といっても正人と二人に血の繋がりはないがな。正人が香港に仕事で出向していたとき、向こうで現地の女性と知り合い、結婚した。彼女の連れ子が冬青と由弦だ」


つまり……。

冬青と由弦は、間柄的には木葉とは従兄弟ということになる。

しかし血の繋がりはない。


木葉はいつか見た雑誌を思い出した。

冬青と由弦によく似た顔……。


「その彼女というのがちょっと訳ありでな。詳しくは言えんが……。とにかく二人は結婚して日本に来た」

「……」

「ところが二人は日本に来てすぐ事故に遭い、彼女は亡くなり、正人は植物状態になった。そして、わしと花枝が二人を引き取った」


父の話を聞き、木葉は疑問が解けていくのを感じた。

冬青と由弦のどこか日本人離れした顔、そして日本人らしくない名前。


――――自分とは、全く血が繋がっていない。


そのことを実感し、木葉の胸に切ない痛みが広がっていく。

俯いた娘に、父はため息をつき、続けた。

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